三菱一号館美術館 - 復元を用いて、旧きモノを新しく。

2月 11th, 2010 by Taguchi Leave a reply »

前回から引き続いて、丸の内パークビルディングと三菱一号館美術館です。今回は、少し建築に目を移してみたいと思います。特に、この場所で特徴的且つユニークなのがジョサイア・コンドルがオリジナルを設計した三菱一号館です。
土地のオーナーである三菱地所を中心に、『復元』という手法を用いて明治初期のオフィス建築に付加価値を加え、美術館として生まれ変わりました。私が美術館を訪れた際、その復元方法の展示を見ることができ、昔の丸の内の歴史や成り立ちや一号館の建築施工方法などを感じることができ、ランドスケープ・アーキテクトとして大変興味深いものでしたので、これを機会に紹介したいと思います。

レンガ造りの三菱一号館美術館。広場を囲むようにして、建物があります。よく見ると黒柱とガラスの構造体が付属さています。

レンガ造りの三菱一号館美術館。広場を囲むようにして、建物があります。よく見ると黒柱とガラスの構造体が付属さています。


 
さて、この『復元』という方法は、建物を保存する事は違いオリジナルのデザイン図面や写真等の資料をもとに、全て造り直したという点に感心させられます。更に、以前のオフィスビルから、現時の需用を考え美術館やカフェといった新しい機能を持たせたために、ただの復元ではなく『再生』ということも同時に行っています。このタダのオリジナルの再現ではない事を明らかに見ることが出来るのが、この広場側にあるガラスのカーテン・ウォールの黒い構造体です。これは美術館と広場の空間的相互関係を持たせるだけではなく、利用者の体験として密着しているところが個人的には気に入りました。広場側からの入り口、更には、二・三階にある美術館展示室の通路から、この中庭を眺望できるようになっています。この部分が引き金となり、広場(ランドスケープ)と建物を繋ぐ役割を果たしており、ここに見られるIndoor/Outdoor(内から外へ、外から内へ)は、建築家とランドスケープ・アーキテクトのコラボレーションの賜物とも言えるでしょう。

三菱一号館美術館のカーテン・ウォール。利用者はここを通りながら、外の広場の空間を眺めることができる。

三菱一号館美術館のカーテン・ウォール。利用者はここを通りながら、外の広場の空間を眺めることができる。


 
他にも気に入った場所は、一号館の中にあるCafé 1894と呼ばれる喫茶・レストランです。明治初期に銀行の窓口として利用してた場所を復元し、今回はカフェとして生まれ変わりました。このクラシックな雰囲気が、私たち若者にとってはとても新鮮ですし、どんな世代の人でも楽しめる空間だと思いました。つまり、ここには私が好きな”Old is New”(旧いものは新しい)の発想が見られるのです。日本のように、長く興味深い歴史を辿ってきた国には、このような旧いものを活かした、ランドスケープ・建築はもっと推進すべきだと思っています。これに似た手法は、ヨーロッパなどに旅行するとよく見ることができます。

Café 1894

Café 1894

 
皆さん、週末を利用して、デートがてらにこの美術館や中庭、更にはカフェを楽しんでみてはいかがでしょうか? 
 
 
 
<参考資料>

  1. 三菱一号館美術館
    美術館のオフィシャルWebstie
  2. 一丁倫敦と丸の内スタイル展 三菱一号館竣工記念
    この展示を私は見ることが出来ました。帯鉄を利用した耐震煉瓦造の展示は、「なるほど。こうすれば良いのか。」と関心した。昔、中国でインターンをした時に心配した煉瓦のみで出来た壁は、きっとこの方法を用いれば、耐震構造になっただろう。

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2 comments

  1. YUKIE  KATO より:

    田口様

    今晩は。
    右も左もわからぬままツイッターの世界に飛び込み、興味ある分野の検索を試すうち、お名前・お仕事等に大変興味を持ち、色々拝見させて頂いています。
    関連記事、資料の紹介など、本当に隅々まで気配りの行き届いたサイトで、色々参考にさせて頂きたく思います。

    三菱一号館・ブリックスクエアは足もとのしっかりした(上部の高層ビル群の存在を感じさせない)、気持のよい空間だと思いました。

    一号館の色彩については、かなり全体的に煉瓦の白華現象が見られました。
    私はこれを煉瓦の特性、と割り切ってよいものか判断がつかず、後日国代耐火工業所の営業の方に訪ねたところ、『それが煉瓦の特性です、煉瓦使うのはその覚悟なくしては扱ってはいけない素材なのです、はい、白華でてますが何か?(笑』というなんともおおらかな返事がありました。

    頭のどこかで、現代の製品や工法の品質基準と照らし合わせていたのだと思います。
    素材色は本当に奥が深いです。

    そして私は壁や床に樹木の影が落ちている様、がとても好きです。
    東京は空間的に(ともすると精神的にも)、キツキツの感がありますが、まちの中で出会うちょっとした緑陰は私にとって大切な心安らぐ存在です。

    すみません長くなってしまいました。
    駄文お許しください。

    それではまた。

  2. Taguchi より:

    加藤さま

    コメント、さらにTwitterにて、フォローどうも有難うございます。ランドスケープそのものが広範囲な空間を扱うため、仕事上、多種多様な分野とのコラボレーションが欠かせない仕事です。きっと加藤さまのような色のガイドラインを作れるような専門家とのコラボレーションも面白いかなと、ついつい想像しています。
    煉瓦の特性や壁に落ちる緑陰に加藤様が抱く気持ちが、とても日本らしい感性が私にとって少し懐かしく感じました。いかに、この小さな感性を他の人に広めることが出来るディテールを都市という規模、もしくは地域という規模といったような大きな視野に反映させることが出来るのだろうか?というのが、ランドスケープの現状の過大なのかもしれません。
    私も色彩に関しては、未熟者なので加藤さまのブログなどを読んで勉強させて頂きます。また、何かお勧めの本や場所などがありましたら教えて頂けると幸いです。

    田口真弘

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