緑の柱・壁面緑化|Living Wall – 丸の内パークビルディング

2月 4th, 2010 by Taguchi Leave a reply »

丸の内パークビルディングのピロティ部にある緑の柱(壁面緑化)について、詳しく見てみたいと思います。
 

遠くから緑の柱を見る。スケール感を感じ取って欲しい。

遠くから緑の柱を見る。ぜひスケール感を感じ取って欲しい。


 
最近の壁面緑化の面白さは、様々な色調とテクスチャーにあると思います。以前までは、つる植物に限られていた壁面緑化の植物素材が、壁面緑化の技術の発達により、グラウンドカバー植物を直接に緑化基盤に植えることが出来るになり、多種多様の植物が用いられるようになりました。つる植物の場合は、「吸着してよじ登る」「からまってよじ登る」「垂れる」などの生育特性を生かした登はん型やユニット型を中心としたものでしたが、現在は、この丸の内パークビルディングの緑の柱に使用された垂直基盤型が現れ、ランドスケープ・アーキテクトの使用する植物素材が、とても自由に広がりました。
 
ランドスケープ・デザインの視点から、この壁面という垂直な構造体を考えると、とても視認性が優れているという点があります。簡単に言うと、普通に写真を取った際に、その画面に占める割合が多いということです。ということは、外部空間において壁というのは、空間を定義するだけでなく、人の目に自然と入ってくる大きな要素なのです。この視覚的アピールを利用し、最近の壁面緑化は企業やデベロッパーが私の建物は「環境に良いものだ!」と主張する広告・看板的な効果を目的とした利用が多いです。私自身の写真はありませんが、銀座のソニービルの壁面緑化も、「環境を配慮している」という会社の方針を示す広告効果を狙ったものとして例が挙げられると思います。
 
 
 
さて、もう少し詳しくパークビルの緑の柱に利用された壁面緑化の植栽について見てみたいと思います。
 
丸の内パークビルディング「緑の柱」 - 壁面緑化のディテール

丸の内パークビルディング「緑の柱」 - 壁面緑化のディテール


 
この緑の柱は何気なく簡単に作れてそうですが、普通の平面上の壁面緑化に比べて丸い形をした柱に植物を植える為に、日当たりの良い・悪い面ができ、それを考慮しながら設計しなくてはならないことがチャレンジです。丸の内パークビルディングの場合は、施工前にモックアップを作って植物の選定に取り組んだそうです。ということは、ここに使われている植物で良好な状態のものがあれば、他のプロジェクトにもきっと使えることでしょう。参考に、日経アーキテクチュアの建築緑化入門で書かれていた使用した植物、19種類を下に掲載しておきます。
 
壁面緑化に使用された19種の植物。「建築緑化入門」より抜粋, P202。

壁面緑化に使用された19種の植物。「建築緑化入門」より抜粋, P202。

特に、セトクレアシア(Tradescantia pallida ‘Purpurea’))の紫系、フィリフェラオーレア(Chanaecyparis pisifera ‘Filifera Aurea’)やリシマキア「オーレア」(Lysimachia nummularia ‘Aurea’)の黄緑系、シマカンスゲの園芸種(Carex morrowii ‘Variegata’?)の白系の植栽を入れるのは、この緑化壁をより絵画的にし、視覚的に面白くしていると思います。
訪れた時には気づかなかったのですが、よく本の記事等を読んでみると、この緑の柱には広告のバナーを付けることが出来たり、夏にはドライミストで涼の空間をつくり利用者がくつろぐことが出来るなど、しっかりとディテールの設計がなされていると思いました。
近い将来、壁面緑化のデザイン的な可能性は本当に楽しみですし、私自身もいつか機会があれば、植物や緑化技術の知識を活かし設計にトライしてみたいものです。このような壁面緑化は、ランドスケープにおけるデザインの新しい素材であることは間違いないでしょう。
 

緑の柱で、ゆっくりと寛ぐ利用者たち

緑の柱で、ゆっくりと寛ぐ利用者たち


 
デザインメモと課題:

  • 今回使われたものは、まだまだ価格が高い。
  • メインテナンスのことを考える必要がある。
  • 最初から美しく見せる為には、最低、半年間の植物の養生期間が必要。(特に春から秋の根が伸びる期間が必要。)
  • 潅水の設定。オーバーフローの水の処理。下にある基盤の方が重力により水が溜まりやすい。
  • 加重のことを考えると、構造壁に付ける必要がある

 
<参考資料>

  1. アーバン・ガーデン・ウォッチング「緑の柱」
    西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエのブログ。半年程前に撮った緑の写真があり、その頃は緑化基盤の網目が目だっていたそうです。私が行った時は、植物が生長していたこともあり、気になりませんでした。このブログは、多くのアーバン・ランドスケープを記録していて勉強になります。
  2. マジカルグリーン 日本地工
    この緑の柱の壁面緑化は、日本地工のマジカルグリーンというシステムを利用しています。専門的に言うと、垂直基盤造成型のボケット型という分類に入ります。
  3. 建築緑化入門―屋上緑化・壁面緑化・室内緑化を極める! (日経BPムック)
    この本は、入門と言う言葉が使われていますが、屋上緑化・壁面緑化に関しての事についてケーススタディと共に書かれており、単なる入門書だけではなく、プロの建築家もランドスケープ・アーキテクトにとっても、とてもお勧めな本です。丸の内パークビルディングの緑の柱のことについても書かれてあります。

<追記デザインメモ2012年4月22日>
ロニセラニチダLonicera nitidaは、フランスのプロジェクトの記事でツゲやボックスウッドのように刈り込まれ、とても美しいと思った記憶がある。この植物は、スイカズラ(Lonicera japonica, Japanese Honeysuckle、忍冬)やツキヌキニンドウ(Lonicera sempervirens)と同じ種類のスイカズラ科で緑陰でよく育つことをメモしておく。スイカズラは、白い花が美しい一方、早く育つ特性があり、米国ではInvasive plantの外来種として嫌われている反面を持つ。また米国のハニーサックルは、とても花が美しく多くの種類がああり、日本の実家に、http://www.engei.netよりヘクロッティやテルマニアーナといった品種を購入して植えたことがある。

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