ランドスケープ留学のアドバイス -日本とアメリカの大学・大学院

2010年 4月 17日 土曜日by Taguchi Leave a reply »

3週間ぶりのブログが更新になります。仕事の締め切りや初めて両親がアメリカに訪問し親孝行に励むなど、少し忙しくしていました。

この間に、偶然、明治大学時代にお世話になった先生から連絡があり、ランドスケープデザインのやる気があり、海外に興味がある子がいるから少し相談にのってくれないか?という連絡がありました。私のほうは、まだまだ未熟者なのですが、アメリカでランドスケープを勉強し、仕事をする生活もすでに7年以上の年月が経っており、私のほうで良ければ相談にのりましょう♪と心よく引き受けることにしました。

今回は、その学生から質問があったことは、他のランドスケープ、もしくは建築やインテリアデザインなどの学生達も同じような疑問を思っているのではないか?と思い、ブログにすることにしました。

ルイジアナ州立大学キャンパス

ルイジアナ州立大学キャンパス 2回目の留学(2003-2005)


 
 
■海外(アメリカ)でランドスケープデザインの仕事で働くためには、どの程度の英語力が必要でしょうか?
 

  1. 本気で、こちらでランドスケープアーキテクトと働くためには、まずアメリカのランドスケープ・アーキテクチュア学科の大学、もしくは大学院を卒業する必要があると思います。なぜなら多くの会社がそれを最低限の雇用条件としているからです。更に卒業資格は、ランドスケープ・アーキテクトの資格(RLA – Registered Landscape Architect)を取る際に必要です。* 個人的な意見になりますが、アメリカに留学して卒業すれば、こちらで仕事を見つけるのも、そこまで難しいことではないと思います。
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  3. アメリカの大学や大学院に行くのに必要な英語力をつけることをお勧めします。もちろん英会話等も重要なのですが、何といってもTOEFL(トフル)という外国人用の英語の試験を受けなければなりません。基本的には、TOEFLの試験を受けて、最低限の点数を取る必要があります。ランドスケープの場合は、他の文系分野の学科に比べて点数が高い必要がないのですが、平均的に学部レベルで173点、大学院レベルで213点ぐらい取れば良いと言われています。まず、このTOEFLの試験を受けてみるというのがスタートラインです。何回でも受けれますので、海外での勉強や就職に興味がある人は、まず受けてみてください。
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  5. さらに、大学院の場合はGREのテストを受ける必要があると思います。これは、英語、数学、論文からなるテストです。日本人にとっては、数学がとても得意なので何とかなると思います。
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  7. 英語とは関係ありませんが、大学の成績なども関係しますので、学生の場合であれば、良い成績を取る努力も怠らないほうが良いと思います。また、ランドスケープの留学を目指すのに必要なのが、ポートフォリオになります。これは、デザイン作品集といったところです。ランドスケープの学生であれば、実習で作成した図面・スケッチやモデルなど、異なる分野の学生は、写真、絵、陶芸、文章などなどを集めておくと良いでしょう。
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  9. 最後に、英語はアメリカに来てから大変な思いをするでしょうが、来てから何とかすると良いでしょう。

他のアドバイスとしては、日本で学部を卒業する予定の人は、ぜひ大学院を目指してください。アメリカの大学院は、日本の大学院のように、以前からランドスケープを勉強してないからと言って門前払いをされることはありません。ハッキリ言えば、アメリカでは、その専門分野のことについて分らないからそこで学生が勉強するのです。米国のランドスケープの大学院には、今まで、デザイン関係の専門分野を学んでこなかった人にも、きちんと教育し、実践が積めるように3年間の教育が用意されています。反対に、デザイン系の勉強を既にした人の場合は2年間で修士が取れるはずです。ランドスケープの修士を取りに来る人には、多くの他分野から来た人達がいるのも特徴的かと思います。
 
 
■特に、今の職に就くために学生時代にどのような努力をなさったのかも知りたいです。

遊び呆けた大学1年生
私の学生の頃は、一年生の時に遊んだり、お酒ばかり飲んでいて、あまり勉強をしたというような記憶がありません。。。ただし、そのあまりの遊びすぎに危機感を感じました。そして、日本の大学にいては、自分が駄目になってしまうような気がして、とりあえず何とかここから抜け出して留学するぞ!ということを目標にして英語の勉強し始めました。そして可能であれば、両親から離れ、自分ひとりで何が出来るのだろうか?というのを試してみたいという気持ちがありました。また将来やりたい事が分からなかったので、「何かこれだ!」といったような、やりたい事が見つかると良いと思っていました。

留学へむけての英語
実は、私の父親が高校の英語の先生をしています。だからと言って、父親から英語を教えてもらったというような記憶がありません。所詮、父と子であって、先生と生徒の関係には、なれないのです。しかし、留学を目指したのも父親の存在の影があったのかもしれません。今、落ち着いて考えてみると、50歳の時に留学した父親が私の最初の留学の見本になり、やる気の源になったのだと思います。もちろん、こう思ったのでしょう。「歳をとった親父に出来たことが、若い俺に出来ないはずがない。」と。
大学2年生の初めから留学の為の英語、つまりTOEFLの試験を勉強し始めたのですが、正直言って非常に苦戦しました。その頃の私は、別に英語が得意でもないし、苦手でもない程度のレベルでした。しかし、このTOEFLは、英会話とも違うし、大学受験の英語とも異なる存在でした。私の場合は、参考書を買って勉強すれば何とか成る!と宣言して受けてみたものの、なかなか点数が取ることが出来ませんでした。実際、次に受けたらからといって、必ずしもそれが以前より良い点であるとは限りませんでした。
その間にも、目指していた留学の締め切りは近づいて来ます。そこで、最終手段として私はトフルゼミナールという留学を専門とした塾に毎週土曜日に半年間通いました。
今、振り返って考えると、このTOEFL受験には、テストを受ける「コツ」が必要だと言えるかもしれません。例えば、予備校の先生は受験のやり方や問題を解くコツを教えます。TOEFLの受験は正に、日本の大学受験のやり方と同じようにコツやスキルが必要だと思います。それを教えてもらうのが一番良い方法だと思います。
大学を受験するときに予備校に通った人であれば、どれだけ予備校がその対策を教えてくれたか知っていることでしょう。

留学への申し込み
目標の点数には少し届かなかったものの、その点数でで申し込める範囲内で、いくつかの大学へ願書を出すことにしました。
これもまた英語を読むのが遅いので、時間がかかりました。さらに、エッセイという『なぜこのランドスケープを勉強したいのか?』という志願文章を書くのも一苦労しました。しかし、これは、じっくり自分について考える良い経験になりました。
また申し込みには、3つの推薦書が必要でした。一つは大学の英会話IIIを教えていたPeter Bendinelliと言う先生から一つ、Peterの薦めたタイの国際ボランティアを学ぶという趣旨のタイ学生旅行でお世話になった青山大学の雨宮先生から一つ、最後に、3年生から研究室でお世話になる予定だった輿水先生から一つお願いして書いて頂きました。他の日本人留学生と話して分かったのですが、英語があまり得意でない日本の先生方は、推薦状のテンプレートのような物を必要であったり、自分で書いてくれと言われることがあるかもしれません。

留学先の選択
驚いたことに、いくつかの大学から留学を認めるという合格通知が来ました。一番驚いたのは、一つの大学は奨学金をくれると言うのです。特別、何か申しこんだ訳では無かったのですが。。。
確かワシントン州にある大学だった思います。その大学と、一番志望であったコロラド大学の二つでどちらに行くか選択を考えることになりました。3年生の7月から留学することになるので、自分の大学を休学する、もしくは認定校留学という制度の利用という二つの選択肢になりました。記憶が定かでありませんが、自分の大学は休学中に多額の学費を払う必要があり、その選択肢は消えました。私は認定校留学とう制度を利用することにしました。その制度は、日本の大学に学費を払うものの、奨学金をくれるというものでした。留学などを扱う大学の事務の人に、アメリカの大学から奨学金をもらっても、認定校留学の奨学金を貰えるのかと尋ねると、それは出来ないということでした。結局、国立公園がたくさんあり魅力的だったコロラドの大学に行くことにしました。

留学する。そしてランドスケープに出会う
英語で分らない授業に必死でついて行けるように一生懸命、勉強しました。日本の大学にいた時よりも数倍も勉強したと思います。毎日、課題が多くでて大変でした。
私は、ここで本当にランドスケープデザインというものが、どのようなモノなのか知り、将来、ランドスケープアーキテクトになりたいと決意しました。

日本へ帰国。日本の大学院? 挫折。
認定校留学は一年という期間がでしたので、4年生の7月に帰国しました。その時点で、友人は就職やら大学院などが決まっている人が多くいました。私自身は少し日本の大学院でランドスケープのことが勉強したい気持ちもありましたので、ギリギリ受験ができそうなンドスケープデザイン関連の大学の先生の研究室を尋ねていきました。そこで、その研究室の先生から言われた言葉は、『いまは就職大氷河期で、運が良くないとランドスケープアーキテクトにはなれないよ。』という非常に冷たい言葉でした。
なぜ、自分のなりたい仕事に就くためにツキに頼るだけで、その勉強が出来ないのか理解できず、挫折に近い状態に陥りました。結局、どこの大学院も受けませんでした。就職活動の時期も過ぎていましたので、それもしませんでした。

ランドスケープの師に出会う
この挫折を追いかけるように、日本の大学も卒業出来るか危うい状態に陥りました。なぜならコロラドの大学の時に受けた単位のいくつかは、単位振り替えが出来ませんでした。驚いたことに、日本の大学の専門分野、緑地学において、私のような前例がなかったようです。
将来のことに関して、どうして良いのか分らない私は思い切って研究室の輿水先生に相談することにしました。「アメリカの大学で勉強してランドスケープアーキテクトの人を知っていたら、紹介して頂けないか?」と。
そうすると、景観設計の都田さんという方がいるので、その人に連絡してみなさいと電話番号をくれました。早速、連絡してみると、「明日にでも私の事務所を訪ねて来い!」というオープンな返答ともに電話が切れました。。。実は、次の日は私の誕生日、2002年9月2日でした。とりあえず特定の予定が無かったですし、わざわざ私の為に時間を作ってくれるそうなので、コロラドで勉強したランドスケープ関連のドローイングを持ち、事務所に訪ねて行きました。
事務所では明るい調子の声で、リサイクル用のコピー用紙の裏紙にサインペンでメモをしつつ、『1年勉強した程度じゃ、マダマダだ。もう一度、アメリカの大学院に戻って勉強して来なさい。そして、次回は出来れば、アメリカで働きなさい。』と言われました。 私が初めて会った、日本人のランドスケープアーキテクトでした。 22歳の誕生日のこの日をキッカケに、何かが振り切れました。もう一度アメリカで頑張ろうと決心しました。

自分ひとりの卒業制作
都田さんは、日大で非常勤講師として教えており、私のスライドの手伝いをしながら、講義を聞きに来たらいいよ。と言ってくれましたので、土曜日の午前中は、藤沢まで時間をかけて通いました。古いスライドの写真の中のアメリカの設計事務所には大変刺激を受け、憧れの気持ちを強めました。
同時に、自分の大学の卒業に必要な単位の授業も後輩の三年生と混じって取っていました。更に、将来どうしてもデザインがしたかったので、私の研究室の先生に、「卒業研究ではなく、卒業制作をしたい。」と願い出ました。当時の私の専攻は農学科緑地学といい、理系の典型的なカリキュラムで全ての学生が卒業研究をしていました。
何とか熱意で先生を説得し、皆が卒業研究する中、私だけが卒業制作をしました。そして幸運なことに無事、卒業することができました。また、他の授業の一環としてやっていた2つのコンペで私の案が入賞しました。この入賞も、将来いつかランドスケープアーキテクトになれるぞ!といった私を勇気付けをしてくれました。

前向きなプータロー
何とか卒業が出来たものの、アメリカの大学院に行くための英語の試験、つまりTOEFLとGREの受験が出来ていませんでした。そして、最悪なことに大学院申し込みの時期(1月、2月)は過ぎていました。
既に三月でした。遅すぎた。。。そして、その頃、大学の後輩は、私のことを「前向きなプータロー」と呼んでいました。夢はあるけど、実際な予定は何もない。まさしくプータロー。もしくは浪人?
この困っているときに、都田先生に会いに行くと、ルイジアナ州立大学は、5月半ばまで遅い申し込みを受け入れているとアドバイスをくれました。また、毎日、近所の図書館で英語の勉強をしました。ギリギリ最低の点数が取れ、ルイジアナ州立大学に申し込みました。そして、合格通知が届きました。正直言って、ルイジアナにはとても興味がありませんでした。都田先生から良いランドスケープの教育があると言われましたが、締め切りに遅くて良い大学が良い大学とは信じきることが出来ませんでした。
しかし、これ以外に選ぶ道は無かったので、またアメリカへ行くことにしました。2回目はルイジアナです。

両親には、ルイジアナ州立大学のあるバトンルージュという町で、かの有名なハローウィンで「Freeze!(動くな。)」と言って、射殺されてしまった町であることは内緒にして行きました。きっと、今でも知らないでしょう。。。

ルイジアナ州立大学の図書館前にあるQuadrangleと呼ばれる広場。Live Oaks(Quercus virginiana)の木が彫刻的で美しい。

ルイジアナ州立大学の図書館前にあるQuadrangleと呼ばれる広場。Live Oaks(Quercus virginiana)の木が彫刻的で美しい。

※なぜ、今頃、私がこのような事を書くかと不思議に思う人もいるかもしれません。留学をする経緯も人それぞれでしょう。私はそれでいいと思います。しかし、このような事情を書くのは、以下の点があるからです。

  • 私は、海外に出る『最初の一歩』がとても難しいと思っています。特に、当時は英語の面ではどのように勉強したら良いのか分かりませんでした。今でも英語に関しては改善して行かなければ、と思っています
  • 私自身には、都田先生のようなアドバイザーがいました。これは、とても幸運なことでした。この文章を読んで、ランドスケープ留学の参考の一つになれば、と思います。上手く私を踏み台にしていって下さい。何か質問があれば、気軽にメール下さい。
  • これからのランドスケープの将来は、グローバル化にあると思います。一般的に日本の少子化が進み、内需が限られて来ています。日本の大企業も海外に重点を置きつつあります。ランドスケープの分野も同じで、もう少し海外の仕事をしていく必要があると思います。
ルイジアナ州立大学の芝生の上で勉強する学生達。

ルイジアナ州立大学の芝生の上で勉強する学生達。

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3 comments

  1. M/A より:

    Taguchiさん、こんにちは。また、はじめまして。現在カナダの大学で学んでいるM/Aと申します。来年の1月にカナダにあるランドスケープアーキテクチュア(また、もしかしたら建築も含め)の院受験を目指しています。また、かなり遅いですが最近になって今の大学でお世話になっているアメリカ出身の教授達にお話を色々うかがわせていただき、だんだんアメリカの大学院にも興味を持ち始めていますが、何せ私が興味のある大学院は全てGREが必要。もしアメリカの大学院も視野に入れるのであれば、ちょっと今年は時間的にも体力的にも無理そうだなと考えている今日この頃です。※また私はカナダに移民しているので金銭的な事を含めてもまずカナダの院に受かれくれたら万々歳なのですが、一方、そんな道のりは甘くないだろうとも予想しています。しかし、その分野の世界的な“レベル”を考えると、おそらくアメリカの1~3位の院の方が、カナダのトップクラスの大学より高いのではとの考えもあり、ちょっと迷っています。もちろん大学の名前じゃない、そこで何をするか、また働いてからどうするかが重要でもあると思うのですが・・・。Taguchiさんのお話を読んで、ぜひ大学での事や現在働いている現場でのお話などお聞きしたいです。また私はかなり遅く大学に入学していますので、体力・能力ともに焦りがあるのも事実です。今後、もしご迷惑で無ければ、いくつか質問させていただいても宜しいでしょうか?こんな見ず知らずの、しかもネットで繋がっただけの者で大変あつかましいのですが・・・。ちなみにお世話になっている教授からは『行くならトップ3を目指せ』とかなり強気のご助言をいただきました。が、当の本人、今の名も知れぬ大学にいながらしてヒーヒーなのに、それってどうなの?とアメリカの大学とカナダの大学の違いが分からないので、ちょっとびびり気味です(苦笑)。M/A

  2. MJ より:

    初めまして。ランドスケープアーキテクトを目指す高校3年生MJと申します。現在、デザイン科高校に通っています、。国内の美大を目指して勉強していたのですが、親に進学を反対されており自力で進学することを考えているところです。海外留学には前々から興味があり、短期留学を試みたこともあります。(不合格でしたが、、、)アルバイトでお金を貯め、国内の大学へ進学し、交換留学制度などを利用するか、海外の大学へ進学するか迷っています。このまま大学進学を諦め、就職する選択もあるかとは思いますが、後悔してしまいそうです。ランドスケープアーキテクトになるには大学を出ていた方がいいのでしょうか?また、英語力には自信がありません。独学で大丈夫なのでしょうか?金銭的に余裕がないのでなるべくお金はかけたくないというのが本音です。親の力は恐らく借りることができないので…
    ランドスケープでの就職に関して、大学を卒業する年齢などが高くなると不利になってしまうなどということはあるのでしょうか?

  3. Taguchi より:

    MJさま
    コメント有難うございます。返信が遅れて申し訳ありません。

    「ランドスケープアーキテクトになるには大学を出ていた方がいいのでしょうか?」
    米国の場合は、特に大学を出る必要はありません。ただし、資格の取得などの条件や就職の条件を考えると大学で専門的なことを学んでいたほうが良いと思います。日本での就職を考えているのであれば、現在、日本で働いているランドスケープアーキテクトの方に聞くとよいでしょう。

    「英語力には自信がありません。独学で大丈夫なのでしょうか?」米国に留学する為には、英語の語学学校でない限り、TOEFLの点数が必要になります。自信が無いのであれば、留学に特化した塾に通うのも一つの手段だと思います。私も以前にTOEFLゼミナールという塾に通いました。

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