樹木を考える - ポケットパークで使われた植栽

5月 10th, 2011 by Taguchi Leave a reply »

「木を植えた男」という絵本を読んだことがありますか?

私は小さい頃に両親が読んでくれたこの本がとても大好きでした。本の内容は、老人が、毎日ひたすら、荒れ果てた土地に木を植え、やがて、そこには平和で美しい森ができ、人と自然の営みが出来ていくという物語です。

私は、幼い頃のこの本の影響なのか、樹木や自然にとても関心があります。そして時折、この自分の好奇心に導かれ、樹木のことを図鑑やウェブサイトを使って調べてみることがあります。木の神秘性や、知らなかった特性に感心すると共に、「この樹木は、こんな場所で使えたら良いだろう、もしくは、この特徴を生かしたらどうなのか?」と考え事をします。

さて、今回は、先日に書いたニューヨークのポケットパークの代表作、Paley ParkとGreenacre Parkで使われた樹木について考え事をしてみることにします。どちらも、Gleditsia triacanthosが密に植えられ、すがすがしい緑の天井を訪れる人々に提供しています。

Greenacre Park

Greenacre Parkの樹木 Gleditsia triacanthos

Paley Park Fountain

Paley Parkの樹木 Gleditsia triacanthos


 
Paley Parkの設計者のRobert Zion氏は「部屋のような空間」をポケットパーク(Vest-pocket Park)として創りたいと思ったそうです。ここには、白く流れる滝の壁とともに緑の天井を持った部屋を今日も見ることができます。黒い樹皮とランダムに伸びていく幹と枝、まるで洋服のレース素材を思わせるような繊細な葉をには、何か人の心を動かせるものがあります。
 
この公園で使われた緑としての樹木、Gleditsia tiacanthosの特徴は以下のようになります。

Honey Locust(Gleditsia triacanthos アメリカサイカチ)
枝張りがとても広く、オープンで広々とした樹形をしている。また、枝や幹はランダムに伸び、密度の低いオープンな樹冠をとるのが最大の特徴。冬のシルエットと灰黒色の幹が魅力的である。しかし、その幹から棘を形成する特性があるので、棘なしの品種を選ぶ必要がある。葉は2回奇数羽状複葉(odd bipinnate)で、小葉が約8-35mmで、軽やかな印象を受ける。光を良く通す為、芝生との愛称が良い。暑さ、乾燥、埃や汚染物質に強い為、ニューヨークでは、街路樹としてよく見かける。種名のtiacanthosは、three-spinedの意味。
大きさ: 12-15m high (24m max), 6-9m spread (-12m)
Hardiness Zone: 4A-8A

Gleditsia triacanthos

Gleditsia triacanthos © Trees for Architecture and Landscape


 
【その他のFabaceae/Leguminosae(マメ科)類似樹木の比較】
Black Locust(Robinia pseudoacacia ニセアカシア、もしくはハリエンジュ)
奇数羽状複葉(odd pinnate)、小葉が約25-50mmの大きさがあり、Honey Locustほど繊細なイメージは受けない。
根に根瘤菌がつき、土壌を豊かにする。河川敷といったスロープのある場所において、安定させるのに利用できる。また耐潮性ががあるため、海岸沿いに植栽可能。幹が黒く、ゴシック調(ひし形)の模様が非常に魅力的であり、直線上に伸びる性質を活かし、standard(一本仕上げ)かつpollarding(枝の刈り込み)を施し、並木状に整形的な庭に植えても面白い。樹形が円柱形なために、単植よりもグループにして植栽すると視覚的に良い。5月から6月に咲く白い房状の花が美しい。枝に棘がある。根が深く伸びるために、芝生との相性も良い。棘が無いタイプの(Robenia pseudoacacia f. inermis トゲナシハリエンジュ)もあるが、花つきはよくないらしい。
大きさ: 15-21m high (24m max), 6m spread
Hardiness Zone: 4A-9A

Robinia pseudoacacia

Robinia pseudoacacia © Trees for Architecture and Landscape


Robinia pseudoacacia

刈り込み(Pollard)されたRobinia pseudoacacia


 
Japanese Pagoda Tree(Sophora japonica syn. Sophora japonicaエンジュ 槐)

葉はRobinia pseudoacaciaに似ている。樹形はGleditsia tricanthosより、枝の密度が高く、丸く広がる傾向がある。日本では、Gleditsia tricanthosの代用として使われているが、個人的な意見としては、繊細さや、光を通した木陰、冬の陽だまりなど、感覚的な要素が同等のものとしては考えていけないと思う。暑さ、乾燥、埃や汚染物質に強い。日本の寺院・神社の周りの緑陰の樹木として使われる。根が細かい為、成木においても移植が容易。棘は無い。種名はjaponicaだが、中国・韓国が原産。ヨーロッパにおいては都市環境・汚染物質に強い木として賞賛されている。耐潮性は中程度。樹上の花はわかりにくいが、地上に散乱した淡黄色の落花はやや目立つ。
大きさ: 10-15m (20m max) high , 15m max spread
Hardiness Zone: 4A-9Bぐらいまで植栽可能、図鑑によっては、7B

引用 http://www.hana300.com/enju00.html
“中国では昔から尊貴の木として尊重されており、周の時代(2000年くらい前)の宮廷の庭には 3本のエンジュが植えられていて、朝廷の最高位にある三公はそれに向かって座ったという。また、学問と権威のシンボルとされ、最高の官位は「槐位(かいい)」と称された。” 英語ではScholar Treeと呼ぶこともある。

 
実際、私のランドスケープアーキテクトの仕事も『木を植える仕事』でもあります。もちろん、開発に携わることが多いので、樹木を切らなくてはいけないことが多々ありますが、それを最小限に抑えたり、もう一度、そこに自然を生むことが、日々のチャレンジでもあります。樹木をより理解することにより、より良いスペースをつくることが出来ればと思います。
 

<参考資料>
■日本の樹木を調べる際には、私は以下の本を利用しています。コンパクトで便利です。

↓最近、改訂版が出たようですが、少し値段は高いですね。
緑化樹木ガイドブック 改訂版―「建設物価」完全対応

■【木を植えた男】 ↓ぜひ観て楽しんでください。印象画的なタッチの絵も良い感じです。

葉の種類と葉序のウェブサイト

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