サステイナブル、それは共生と成長
エコロジー、それは環境にやさしい事
生物多様性、それは全ての生物、生態系の多様性との共存
…
私達ランドスケープ・アーキテクトはこのようなモットーを基に仕事をしている人が多いことだと思います。しかし、実際は不動産開発に関わる仕事が多く、「本当に環境にやさしい空間を創っているのだろうか?」という課題にぶつかることが多くあります。なぜなら、私達の仕事には、依頼者がおり、その依頼者は彼らのビジネスの為の経済的利益、つまりお金におけるサステイナビリティーを目指しているからです。
では、これからのランドスケープ・デザインはどうするべきなのか?
この質問に返答するのは、なかなか難しいことであるし、時と場所により異なるかもしれません。私の現在の答えとしては、経済的にもサステイナブルにし、かつ環境にも優しくすると両者が共にある設計・計画をしていく必要があると思います。そして、それが可能な時期になってきたと最近は感じています。温暖化・エネルギー問題に対しての一般の人々・企業の考え方が変化しつつあるからです。
更に、土地に対して、この環境、経済の両者をプラスの方向性を示すと共に、芸術的な面もランドスケープに織り込んでいき、アートとサステイナブルが両立し、バランスよくなれば、それは長期に渡って皆さんから喜ばれるランドスケープになるのでしょう。
さて、なぜサステイナブルなランドスケープについて今回、書いてみようと思ったのは、先週のLAF(Landscape Architecture Foundation)という財団法人の講演がきっかけです。LAFのエグゼクティブ・ディレクターのBarbara DeutschさんがEDSAの事務所にやってきて、直接、話を聴く機会がありました。この講演には、他のランドスケープ事務所、もしくは関わるコンサルタントの人たち、学生が参加し、その後、Cocktail Party形式で懇親会も行われました。
この財団法人が現在取り組んでいるプログラムが、“Landscape Performance Series”という、サステイナブルなランドスケープのケーススタディのデータベース化です。今までに作ったランドスケープを、サステイナブルな面において、どのような効果があるのか計測してみる。そして、その計測データや研究を、今後のランドスケープの計画、デザイン、開発・保全に活かしていこうと取り組みです。以下がLandscape Peformance Seriesの主要項目です。
- Case Study Briefs|ケーススタディ
- Benefits Toolkit|効果計測ツール
- Factoid Library|研究を基にした事実データ
- Scholarly Works |学術研究
そして、以下のような項目について考慮されてるようです。
- Green roof
- Native and adapted plants
- Permeable pavers
- Cistern for rainwater storage & use in irrigation
- Smart irrigation system
- FSC-certified wood
- Local stone
- Provides habitat
<例> Increased bird species on the site from 7 to 23. - Reduces stormwaterrunoff
<例> Captures and infiltrates 40% of all rain falling on the site. - Captures and cleans stormwater runoff
- Lowers water use
- Reduces the urban heat island effect
- Lowers energy costs
<例> Lowers energy costs by an annual average of 20% and average of 50% in summer. - Sequesters carbon
- Cleans the air
- Prevents erosion
実は、このLandscape Performanceは、建築のBuilding Peformanceのランドスケープ版です。つまり、建築のBuilding Peformanceは、とても分かりやすいのです。例えば、LEDに電球を換えて、消費電力を何%抑えたとか、トイレの水を流すのに中水を利用したから、水の消費を何%抑え、結果的に、いくら節約した等というものです。では、ランドスケープでは、どのような効果、省エネを生んでいるのか?というのを、はっきりさせよう!ということが大事なのです。
動画: LPS #4 – Challenges with Landscape Performance
(一緒に働いているグレッグもコメントしています。)
【動画のメモ】
■ランドスケープは時間と言う軸の4次元に存在すること。一方、建築は三次元に存在する。
■ランドスケープからの効果を計ること - 大学や公共研究機関との連携を深め、データを取る。
■長期的な視野でメインテナンスを含めて、どのような効果があったのか、そしてその効果を計ること。
■POE(Post Occupancy Evaluation)をすることの大事さ。
■プロジェクトはモニタリングされ、計ることが可能なはずである。そして、フィードバックがデザインに反映されるべき。
■効果だけで計るべきではない、私達の感情や心に訴えるものがあり、そしれランドスケープの効果があるのなら、それが最大のデザインである。両者を共に上手く織り込んでいくことが大切である。ランドスケープの詩的情緒を大事にすべき。
動画: ブロックを使った、ランドスケープの構造・システムについてレイヤー的な分析(土壌・水循環・植生・人の動き・エネルギー)が面白い。
今まで私のブログのケーススタディという項目のなかで、自分がこれは素晴らしいと思ったランドスケープのプロジェクトに関して、デザイナー・計画者としての観点から、その中から得られる良い点、教訓のようなものを探して書いていました。これからは、目に見えないサステイナブルな面においても書いて、ランドスケープの良さを伝えていけたらと思います。
<参考資料>
http://www.lafoundation.org
http://treebenefits.com
田口さん、こんにちは。目に見えないサスティナブルな面、とても興味深く思います。期待しています。
今、内藤廣さんの『環境デザイン講義』を読んでいるのですが、その中でも例えば温度・湿度の適正値は大体数値で把握できても、その数値どおり計画すればよいかと言えばそうではなく、輻射熱の問題や風が抜けるか否かなど、全部絡めて設計する必要がある、という内容にとても近いものを感じました。
様々な要素の工学的面においての裏づけを踏まえ、心地よさや魅力の質を考えて行くことが必要なのだと改めて考えています。
加藤さま、コメントどうも有難うございます。
サステイナブルなランドスケープ・都市・建築には、いろいろな環境要素をトータルに考えつつ、総合的な(Holistic)なアプローチが必要ですね。
そういう意味では、それぞれの専門職がお互いの分野を尊重し、コラボレーションしながら仕事が出来るといいと思います。きっと、加藤さんの色環境、私のランドスケープもその一部分なのであるということを認識し、謙虚に多くの物事を見て、勉強していく必要がありますね。
また、加藤さまの専門分野において色環境における「サステイナブル」なものも、たくさんあるのでしょうね。何か思い当たりますか?
田口さま、随分と時間が経過してからのお返事で、申し訳ありません。色環境のサスティナブルについて、あれこれ考えておりました。
一番身近なところではやはり長く接してきた自然素材(とその色)なのだと思います。それは均質でなく、風雨に晒されることによって変化し、やがて朽ちていく。そうした時間の変化も含めて、持続可能な色=生物(ヒト)と同じように循環するもの、と言えるのかも知れません。
その中で一つの方法論として10YRをサスティナブルな色(色相)、と考えています。併せて素材・質感のことをどう加味していくか、が環境色彩の課題です。