Archive for 2016年6月

街の宝物 それは、公共空間

6月 18th, 2016

ニューヨーク市は、公共空間をどれだけ大事にしているのでしょうか?

ニューヨーク市の都市計画長を委任された凄腕のキャリアーウーマン、アマンダ・バーデン。彼女はリーダーシップを発揮しながら、マンハッタンの緑の骨格である公共空間を再生することにより、街を活性化しました。その彼女の苦労と決断力、住民に耳を傾けた日々の努力を、日本でも有名になっているのTED TALK動画で紹介します。英語が苦手な人も、日本語字幕がついていますので、ぜひご覧になってください。

彼女の役職は、日本でいえば東京都の都市計画長という位置であると理解してもらえると分かりやすいと思います。彼女は多くの住民に耳を傾け、人々が欲するものを見出し、時にはハイラインのような公共空間を保護することをサポートする決断をしました。都市計画長が女性というのも、米国らしいですね。米国は初めての女性大統領が当選する日も近いかもしれませんしね。

TED TALKのウェブサイトでは、バーデンが » Read more: 街の宝物 それは、公共空間

ランドスケープアーキテクチャーとの出会い-輿水肇先生の上原敬二賞ー

6月 12th, 2016

「緑地学を英語で訳すと何というですか?」

大学二年生の始め、私が輿水肇先生に尋ねた初めての質問でした。

「田口君、緑地学とは英語ではLandscape Architectureと言うんだよ。」そう教えてくれたのは、当時明治大学で緑地工学の教授をしていらした輿水肇先生でした。私が留学したいことを伝えると、先生は緑地工学研究室のガラス棚のびっしり詰まった本の中から、大学受験の赤本に似たような英語の本を取り出して渡してくれました。その本にはLandscape Architectureを教える海外の大学名、学部名、専門の特徴などが書かれていました。そこで初めて私は、ランドスケープ・アーキテクチャーという言葉に触れたのでした。

これを機に私はランドスープアーキテクチャー学科への留学に向けて本格的に準備をしはじめました。大学三年生になると輿水先生の研究室のゼミに入り、半年後にはコロラド州立大学に留学して、ランドスケープアーキテクチャー、特に計画や設計と言ったものを勉強しました。

今月、嬉しいことに、とてもお世話になった輿水先生が日本造園学会の上原敬二賞を受賞されました。
http://www.jila-zouen.org/awards/uehara_award_winners
同時に受賞された、東京農業大学の進士五十八先生、日本大学の勝野武彦先生も有名な先生です。ランドスケープの業界の方はご存知の方も多いのではないでしょうか?

米国の大学に留学する際には、推薦状が三通ほど必要になります。私がコロラド州立大学、ルイジアナ州立大学院の留学の際には、輿水先生に推薦状を書いて頂きました。在学時に一年間留学していたので、実際に輿水先生のゼミにいた期間は短かったのですが、卒業後も先生には多くのことを教わりました。米国の屋上緑化会議Green Roofs for Healthy Cities(Cities Alive)に一緒に参加して、屋上緑化や緑化壁の製品、課題、展望について語りました。2014年には、シドニーのWorld Green Infrastructure Conference(世界屋上緑化会議)に行き、この会議を日本に誘致するお手伝いをさせて頂きました。2015年には、名古屋で世界屋上緑化会議の開催のお手伝いをさせて頂きました。

今回、輿水先生が受賞された賞の名前になっている「上原敬二」ですが、日本のランドスケープアーキテクチャーの始祖とでも言うべき方です。アメリカはセントラルパークを設計したフレデリック・ロー・オームステッドが始祖、日本では、明治神宮の森を設計した上原敬二が始祖だと私は個人的には思っています。

実は、セントラルパークを設計したのはフレデリック・ロー・オームステッド(Frederick Law Olmsted)とカルバート・ヴォー(Calvert Vaux)の二人なのですが、その後の貢献を含めるとオームステッドがランドスケープアーキテクチャーの始祖であると言うのが一般的です。オームステッドは、ボストンのThe Fensを含むエメラルドネックレス等の多くの公園、ナイアガラの滝公園、ヨセミテ国立公園、スタンフォード大学キャンパス、米国造園協会の設立者の一人になるなど、米国のランドスケープに大変貢献した人物です。

一方日本に視点を移してみますと、明治神宮の森を作る際には、公園の父と呼ばれる本多静六、その弟子の本郷高徳と上原敬二が関わっています。その後に残した文献の量、日本造園学会の設立、東京高等造園学校の設立などを踏まえ、その後の日本のランドスケープアーキテクチャーを考えると、日本のランドスケープの始祖は上原敬二だと私は思います。

明治神宮の森は、ランドスケープ計画の要素が含まれています。以下のNHKの動画をぜひ見てください。

明治神宮・不思議の森 by Tokiomate

上原敬二についての進士五十八先生と濱野周泰先生の論文が参考になります。
http://ci.nii.ac.jp/els/110004305654.pdf?id=ART0006477078&type=pdf&lang=en&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1465771203&cp= » Read more: ランドスケープアーキテクチャーとの出会い-輿水肇先生の上原敬二賞ー

これからランドスケープを勉強する、実務をする人への本(造園計画、造園技術)

6月 5th, 2016

私は日本の大学で緑地学を学び、米国でランドスケープアーキテクチャーを学びました。そして、米国のEDSA事務所でランドスケープアーキテクトとして、11年働いています。今年、このブログに連絡をくださった方の中から二名、米国のランドスケープアーキテクチャーの大学院への留学が決定したと連絡をいただきました。これは、とても嬉しいことだと思います。しかし個人的にですが、日本人でランドスケープの分野に関わる若い人たちが年々少なくなっているような気がしています。私は現在日本におりませんので、感覚的にですが、留学する人も僅かなのではないかと思います。
ただ嬉しいこともあります。日本で他の分野を学んでいた方が、ランドスケープを新たに学ぶために米国へ留学をしたいという相談を受けることが増えてきました。例えば、建築、社会地域学、または、経済、英文科など、それは人それぞれです。

では、このような方が、手軽に日本語で、どのようなランドスケープの本を読んで勉強すれば良いのか?
今日はその方法の一つをご紹介したいと思います。

高等学校用の「造園計画」という教科書を私はお勧めします。実務をしている私が見ても、よくまとまっていると思います。大学の先生が教えるような基礎的なことが大体カバーされています。とても安価な本(当時400円)ですので、大学生でもぜひ持っておくと良いと思います。実務をする場合にも、一冊持っておくと便利だと思います。
本に記載されている(日本、世界の庭園の歴史)は、簡潔に書かれていて分かりやすく、この本に出てくるような庭園や公園には、ぜひ足を運んでみるとよいでしょう。私は、大学四年生の時(2002年)に一冊、2010年に一冊買っています。コンピューター技術の発展もあり、私の持っている2010年度版に記載されている、造園製図については少し時代遅れの内容なので、現在は改定されていると良いのですが、確認はできていません。
また、この本は、造園の範囲での設計や計画に収まっており、今後、近代や現代のランドスケープの広大な領域までカバーできるような内容に将来改定されることを期待しています。そして、マスタープランのような敷地計画や、都市デザインまで、現代のランドスケープの仕事をカバーする内容になると良いと思います。これらの不足部分や将来補充に必要な項目があるものの、ランドスケープアーキテクトを目指す方に、「一冊持っているべき本」としてお勧めします。ランドスケープの分野において、高校生から学ぶ人たちがもっと増えてくると良いのかもしれませんし、実務においても採用していくことを検討する必要があるのではないでしょうか?

高等学校教書 造園計画、造園技術がランドスケープ初心者にお勧めです。

高等学校教書 造園計画、造園技術がランドスケープ初心者にお勧めです。


次の本は、これも高校の教科書の「造園技術」です。これは、 » Read more: これからランドスケープを勉強する、実務をする人への本(造園計画、造園技術)